牛首紬:加藤改石謹製手織り紬の色無地
2020年12月10日 17時10分紬のコーナーに牛首紬を染めた色無地着尺(反物)が新しく5色追加されました。加藤機業場の紬で、無形文化財指定:加藤改石謹製の正真正銘手織りの牛首紬を染めた、レトロ感溢れるおしゃれな紬の色無地です。
色は全5色で、全ての色を着物スタイリストさんが厳選して出した色で、染め上がりはレトロ感溢れる紬らしい素敵な色に染まりました。
■ 牛首紬:加藤改石謹製 ≪アンティークボルドー≫
玉繭から引いた玉糸は、節の出方も独特でカジュアル感ある紬になりました。
スタイリストさんが選んだ色だけに、言葉では表現しにくい、魅力ある色です。
次の色もレトロ感ありシックにカジュアルな色に染まっています。
グレーにも近く、それでいてパープル系のシックな色です。
改石さんの素晴らしい紬を、スタイリストさんがおしゃれにアレンジしてくれました。
次も素敵な色で、濃色のシックなグリーンの色無地です。
■ 牛首紬:加藤改石謹製 ≪ブリティッシュグリーン≫
濃色は紬のレトロ感が最もでるので、この深みある緑も正にそれです。
手織りの紬ならではの生地肌のムラ感がたまらなくオシャレですね。
もう1色のグリーンは、黄緑系を渋くレトロにした独特なモスグリーンです。
■ 牛首紬:加藤改石謹製 ≪モスグリーン(渋い黄緑)≫
中濃度な色合いの緑なので、玉繭の節にできる色溜まりと、生糸(単繭)の色に濃淡の違いが出て、紬感がハンパないです。
レトロでアンティークな色なので、若い方~ご年配の方までオシャレに着こなせる色です。
そして最後の色が最も紬らしさがあるベージュ系の色です
■ 牛首紬:加藤改石謹製 ≪ベージュブラウン≫
生成りでもなく、金茶でもないベージュ系ブラウンなので、癖が無くシンプルに着こなせる色です。
改めて加藤機業場の牛首紬について解説させて頂きます。
石川県南部の白山市の山間の村で生み出される牛首紬は、加藤機業場さんと西山産業さんの二つの機場で作られる紬で、白山紬とも言われます。
着物通販を展開する京都ワビタスの牛首紬は、全て加藤機業場さんが織られた手織りの紬を使用しています。
その特徴は、使っている糸、御年99歳の加藤改石さんが今も尚作業されるかせ練りという手作業の練り、牛首紬独特の「糸はたき」という工程など全て加藤さんでならではの工程により出来上がった生地は、よく「釘抜紬」などとも呼ばれるように丈夫な質感です。
【特徴1:糸】
その特徴の一つでもある糸ですが、緯糸には二頭の蚕が作った玉繭60個から直接手でひいた玉糸を使っています。玉繭は、単繭がが作った繭と比べて糸が複雑に絡み合い、うねりが強く独特の節が出るため、躍動的な紬ならではのカジュアル感を作り出します。まわたを紡ぐのではなく手で挽くことにより、絹糸独特の真珠のような光沢感が生まれます。玉繭は2頭の蚕が吐いた糸が不規則に重なり合っているため製糸工程で高度な技術を要します。加藤さんでは単繭を経糸に、玉繭を緯糸に使用されています。
〈右が玉繭、左が単繭〉
【特徴2:織り上がりまでの工程】
1、製糸(のべびき)
繰糸釜の湯に繭を浮かべ、経糸は約単繭80個、緯糸は玉繭60個から1本の糸を挽き出します。
糸の太さを揃える技能を要する仕事であり、それらは製糸の熟練工の経験から生まれる技術に任されています。
加藤さんが使用されている製糸機は、明治初期に入ってきた形そのままの座繰り製糸機です。
2、管巻き
のべ枠から管に巻き取る工程で、昔は1本1本で巻き取っていましたが、現在は管巻器により、1度に12本巻き取る方法を取られています。昭和初期頃に動力に変わり、複数本とれるようになりました。
3、のべつむぎ
管から引き出した糸にゆるく「より」をかけながら大枠に巻き取り「かせ」をつくります。経糸2400m、緯糸3000mを1かせとし、枠を外してから乾燥したものを「がらがせ」と呼びます。
4、糸練り
生糸はタンパク質であるフィブロインとセリシンの2重構造になっています。精練はご存じのようにセリシンを取り除きフィブロインが絹の感触と光沢を生み出す作業のことです。石鹸と重曹を用いてセリシンを煮溶かしたあと、糸に残ったセリシンや石鹸をきれいに落とすために、水洗いし脱水します。今もされているかは分かりませんが、この糸練りの工程を加藤改石さんがされていました。今から約9年ほど前に見学に行かせてもらった時は、改石さんは90歳でしたが手作業で糸にお湯か水をかけながらセリシンを落とす「かせねり」という工程をされていました。
5、糸はたき
牛首紬が「釘抜紬」といわれるくらい丈夫でしなやかなのは、この「糸はたき」という加藤さんならではの工程があるからかもしれません。糸を何度もしゃくるようにはたいて、1本1本の糸にさらなる空気を吹き込みます。
この作業により蚕が糸を吐いた時のうねりを取り戻し配列を整えます。工程の間に何度も行うことにより真珠のような光沢の糸が更に輝きを増した独特の光沢と、ふんわりとした触り心地が生まれてきます。
6、糊付け~管巻きまで
経糸は織機にかけた時「うわそ」と「したそ」に分けてかみ合います。その間を緯糸が通るので、滑らかにして通りやすくするため、経糸に糊付けをします。糊の原料になる米の粉を煮込み糊を作ります。そこに糸を浸して手でまんべんなく糊を付けていきます。
糊付けされた糸を「かせしぼり器」を用いて、まんべんなく糊を絞り取ります。そして「かせくり」(糸を巻き取る作業)した糸を「整経」(経糸を整えて巻き取り)と「管巻き」(織機にかけるため緯糸を小さな管に巻く作業)をして、機織りの用意が出来上がります。
7、機織
「へ」に通した経糸は両足交互の足踏みにより「うわそ」「したそ」に分かれて口が開き、その中を緯糸を巻いた管を差し込んだ「杼(ひ)」が1回飛ぶごとに、左手で握った「かまち」で打ち込みます。
両手両足の力配分、タイミングが牛首紬の風合いを作り出します。
伝統工芸士の織子さんがいったん織り出すと「ぱちん、ぱちん、ガコン、ガコン」とリズミカルに機を織る音が響き渡ります。それでも複雑なうねりのある玉糸を緯糸にしているので、スグに
機を止めて糸を整えて再び織り始める、それの繰り返しです。
一日にほんの少ししか織れませんが、織り上がった生地は、「無形文化財指定、加藤改石謹製」という判と「牛首紬検査の証」という判が押されて出荷されていきます。
そんな加藤改石謹製の牛首紬をシンプルに無地に染めて今回ご紹介している反物が出来上がりました。
何度も申し上げますが、牛首紬は太くて節のある玉糸で織りあげるのが特徴で、節が多く白生地で見る時よりも染色した後のほうが、素朴でレトロ感とカジュアル感溢れる独特な優雅さが浮かび上がります。
加藤機業場で織られた牛首紬も、説明したように打ち込みが強いため、無地染とはいえ染めるのも難しく、一度から2度くらい地入れ(湯通し)して染付を少し良くしてから染めないと綺麗に染まりません。
今回は5色とも凄く完成度の高い染め上がりとなりました。
「着物は紬」という紬好きな方にはたまらないハイグレード・ハイクオリティーな紬のおしゃれな色無地着尺です。
本品は、着物通販サイト京都wabitasの【紬・綾織りコーナー】に出させて頂いております。白鷹板締め絣お召しと並び高級紬がご覧頂くことができます。
京都三条にあるワビタスショールームでは、この牛首紬をはじめ高級紬着尺などサイトの商品を常設しております。現品を一度直に見てみたいという方は、気軽にご予約下さい。